社内仮想化基盤刷新の背景
株式会社ビットポイントジャパン(SBI グループ)は、暗号資産の取引プラットフォームを運営している。取引サイトはパブリッククラウドで堅牢に運用していたが、社内のバックオフィス(OA)系は長年オンプレミスの仮想化基盤に運用していた。
同社では預かり資産の増加に伴い、社内基盤の「堅牢化」「運用効率化」「復元力の強化」を優先課題と位置付け、オンプレ側の仮想化基盤を刷新した。プロジェクトを統括した執行役員CISO三反田博也氏は、セキュリティとIT 運用を横断する立場から「迅速な立ち上げと、長期にわたり安定運用が可能であること」を要件に、製品とパートナーを選定、設計から移行、教育・運用移管までを一貫してリードした。
刷新を促した
複合的なリスク要因
刷新の背景には、主に三つのカテゴリーに分類される複合的なリスクがありました。一つ目は、物理的な可用性リスクです。オンプレミスの物理機器の老朽化が進んでおり、過去には突発的な電力供給の影響が発生した際、サーバーの一部が再起動に失敗するなど、電源系統を含む物理的な運用リスクが顕在化していました。
二つ目は、契約面での予見性の低さです。従前の仮想化基盤は、ミドルウェア提供事業会社の再編でライセンス費用やサポート方針が不透明となり、長期的なコスト管理や運用継続性に懸念を抱えていました。 三つ目は、体制構築の緊急性です。当初依頼していたパートナーは、求められる短期(2024 年度内)での移行に必要なリソース確保が困難であるとの見解を示したため、年度内完了を目指す同社は、極めて高いスピード感で新たなパートナーの選定が急務となりました。
運用性、安定性、
コストの三つの優位性
同社は複数の仮想化ソリューションを比較検討し、前年8月に約1カ月のPoC(概念検証)を実施。最終的にOSSの仮想基盤であるProxmox VirtualEnviromentを採用しました。採用の決定要因は、主に三つの優位性に集約されます。
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01
安定性と堅牢性
KVM などの成熟した実績ある技術を組み合わせて統合的にラッピングしており、安定稼働が期待できる点。
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02
高い運用性
Web ベースの統合管理コンソールを通じて、仮想マシン群の監視や操作が一元的に行える点。
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03
コストと柔軟性
サブスクリプション体系や柔軟な運用により、長期的な費用管理の予見性が高まる点。
パートナー選定においては、技術者プロトコルで会話ができ、技術的な知見を起点とした迅速かつ的確な一次回答が可能であること、そして既存の IT資産を最大限に活用し、短期移行の確度を高める「現実解」を提案できるクラスアクトの支援姿勢が評価されました。
クラスアクトの伴走支援と
即応体制
プロジェクトは PoC 完了後、2025 年初頭に設計と準備を進め、実作業は主に 2 月、3 月の約 2 ヶ月という短期間で集中的に実施されました。移行手法は、既存 VMのV2Vと、物理サーバーのP2Vを併用する複雑なものでした。移行方針は「リスクレベルと老朽化に対する切迫度を総合的に判断し移行する」という段階的なアプローチを採用し、ビジネスへの影響を最小限に抑えることに成功しました。
本番移行の時間帯については、データ量によって移行にかかる時間も変わるため、平日定時後の移行や金曜日の夜から移行の準備を開始し、土曜日に移行するなどでビジネスへの影響を最小限に抑える等の適切な提案と実作業をサポート。
刷新の背景には、主に三つのカテゴリーに分類される複合的なリスクがありました。一つ目は、物理的な可用性リスクです。オンプレミスの物理機器の老朽化が進んでおり、過去には突発的な電力供給の影響が発生した際、サーバーの一部が再起動に失敗するなど、電源系統を含む物理的な運用リスクが顕在化していました。
統合管理による
運用負荷の劇的な軽減
移行後は「期待以上のパフォーマンスで安定稼働している」(三反田氏)。現場が特に評価したのは、一元管理による運用負荷の著しい軽減です。従来のようにサーバー室でモニターを物理的に接続して操作する作業は不要となり、デスク上の統合管理コンソールからVM の状態確認、起動/停止、スナップショット取得などが直感的かつ容易に実行可能になりました。
運用担当者は「ボタン操作が中心で、物理サーバーに直接触れる頻度が下がった」と語っています。構築完了後には運用引き継ぎ期間を設け、ハンズオンによる運用教育を実施し、日常運用からバックアップ、簡単な復旧手順までを支援。関連書籍(クラスアクト担当者が執筆に関与)や手順書を併用したことで、仮想基盤に不慣れなメンバーでも安全に対応できるナレッジ移転体制が整備され、属人性の高い作業が標準化されました。結果、現場は改善活動や企画といった本来業務に時間を振り向けやすくなりました。
強固なレジリエンスを
実現する多層的バックアップ
導入による効果は、運用効率、可用性、そして体制強化の多岐にわたる側面で現れています。特に心理的な負荷が軽減されました。プロジェクトの完遂にあたり、バックアップは多層的な構造で設計されました。具体的には、(1) クラスタ間の相互バックアップ、(2) 専用バックアップサーバーへの定期バックアップ、(3) 月次での外部媒体(USB 等)へのオフライン退避、という仕組みを組み合わせています。
Proxmox Backup Server は、ProxmoxVE の 管理画面から一元的に操作をすることが可能となっており、運用負担が少ない点が特長です。また、直近のマイナーバージョンアップで USBストレージが正式にサポートされたタイミングを捉えることで、低コストで外部媒体への分離を実現しました。
ランサムウェアなどの論理的なデータ破壊に対し、複数の復元手段が確保され、「身代金を払わずに復旧する現実性」が高まっています。
さらに、為替や料金変動の影響を受けやすいクラウドコストの平準化を目的とし、クラウド側にある長期保存データをオンプレミスにアーカイブする利用方法も実現しています。クラスアクトは、既存サーバーをバックアップ用途へ転用する現実的な案や、データ保持ポリシーを提案し、運用負荷、費用、リスクの最適なバランスを実現しました
長期サポートへの期待と
グループ横展開の展望
同社は、Proxmoxの長期にわたる安定的なサポート継続を強く重視しており、「10 年運用」の実現に期待を寄せています。将来的には SBI グループ内での横展開も視野に入れつつ、オンプレミスとクラウドを最適に配置し、事業継続計画(BCP)とコスト効率の両立を目指す方針です。
パートナーであるクラスアクトに対しては、単なる構築だけでなく、運用や教育まで一気通貫で伴走し、環境や制度の変化に応じて提案を継続的にアップデートしていくことを期待しています。 老朽化、契約上の課題、そして体制構築の緊急性といった複合的な課題を抱えながらも、PoC から設計、短期移行、そして運用教育へと段階的かつ着実に進められた本プロジェクトは、仮想化基盤の見直しを検討する企業にとって、実践的で再現性のあるモデルケースと言える。

「迅速な立ち上げと、
長期にわたり安定運用が可能であることが要件でした。
移行は想定していなかった領域まで支援してくれて、
運用は期待以上のパフォーマンスで安定稼働しています」